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血圧を下げる食べ物とは?効果的な栄養素と食材を専門家が徹底解説

健康診断で「血圧が高め」と指摘された経験はありませんか?高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病など重大な病気を引き起こすリスクがあります。日本では成人の約3人に1人が高血圧といわれており、決して他人事ではありません。

高血圧の予防や改善には、薬物療法だけでなく、日々の食生活の見直しが非常に重要です。本記事では、血圧を下げる効果が期待できる食べ物について、科学的根拠に基づきながら詳しく解説します。毎日の食卓に取り入れやすい食材や調理法のコツもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。


目次

  1. 高血圧とは?基準値と放置するリスク
  2. 血圧と食事の深い関係
  3. 血圧を下げる栄養素とそのはたらき
  4. 血圧を下げる効果が期待できる食べ物一覧
  5. 注目の食事療法「DASH食」とは
  6. 減塩の重要性と実践のコツ
  7. 血圧を上げてしまう食べ物にも注意
  8. 効果を高める調理法と食べ方のポイント
  9. 食事療法を行う際の注意点
  10. まとめ

1. 高血圧とは?基準値と放置するリスク

高血圧の診断基準

高血圧とは、血管内の血液が流れる際にかかる圧力が慢性的に高い状態を指します。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」によると、診察室で測定した血圧が収縮期血圧(上の血圧)140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。

家庭で測定する場合は、診察室よりも5mmHg低い値が基準となり、収縮期血圧135mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上で高血圧とされます。

高血圧を放置するとどうなるか

高血圧は自覚症状がほとんどないため、放置されがちです。しかし、高い血圧が続くと血管壁に常に強い圧力がかかり、動脈硬化が進行します。その結果、以下のような重大な合併症を引き起こす可能性があります。

  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
  • 心筋梗塞・狭心症などの虚血性心疾患
  • 心不全
  • 腎臓病・腎不全
  • 大動脈瘤
  • 網膜症による視力障害

国立循環器病研究センターの研究によると、血圧が2mmHg下がるだけでも、国内での循環器病による死亡を約2万人減らすことができるといわれています。このことからも、日常的な血圧管理の重要性がわかります。


2. 血圧と食事の深い関係

なぜ食事が血圧に影響するのか

血圧は、食事から摂取する栄養素によって大きく影響を受けます。特に塩分(ナトリウム)の過剰摂取は、血液中のナトリウム濃度を高め、それを薄めるために体内の水分量が増加します。その結果、血液量が増えて血管壁にかかる圧力が高まり、血圧が上昇するのです。

一方で、カリウムやマグネシウム、カルシウムといったミネラル類、食物繊維、不飽和脂肪酸などの栄養素には、血圧を下げる作用があることがわかっています。

日本人の食塩摂取量の現状

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、食塩摂取量の目標値として成人男性で1日7.5g未満、成人女性で6.5g未満と設定されています。さらに、高血圧や慢性腎臓病の方については、日本高血圧学会が1日6g未満を推奨しています。

しかし、令和4年の国民健康・栄養調査によると、日本人の1日あたりの食塩摂取量は男性で10.5g、女性で9.0gと、目標値を大きく上回っているのが現状です。和食はヘルシーなイメージがありますが、味噌汁や漬物、醤油など塩分を多く含む食品が多いことが課題となっています。


3. 血圧を下げる栄養素とそのはたらき

血圧を効果的に下げるためには、以下の栄養素を積極的に摂取することが推奨されています。それぞれのはたらきを詳しく見ていきましょう。

カリウム ─ 塩分排出の立役者

カリウムは、血圧を下げる効果がもっとも期待できるミネラルです。体内に吸収されたカリウムは、腎臓でナトリウムの再吸収を抑制し、尿中への排泄を促進します。これにより、体内の余分な塩分が排出され、血圧の上昇を防ぎます。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、カリウムの摂取目標量として成人男性で1日3,000mg以上、成人女性で2,600mg以上が設定されています。しかし、令和元年の国民健康・栄養調査によると、日本人のカリウム摂取量は男性で2,439mg、女性で2,273mgと、目標量を下回っています。

高血圧の方がカリウムを多く摂取すると、収縮期血圧が約4mmHg、拡張期血圧が約2mmHg低下するというデータもあります。

カリウムを多く含む食品には、野菜類(ほうれん草、小松菜、アボカドなど)、果物類(バナナ、キウイフルーツ、柿など)、いも類(じゃがいも、さつまいも、里芋など)、海藻類(昆布、わかめ、ひじきなど)、豆類(大豆、納豆、枝豆など)があります。

ただし、カリウムは水溶性のため、茹でたり水にさらしたりすると流出してしまいます。生で食べられるものはそのまま、加熱する場合はスープや味噌汁など汁ごと摂取できる調理法がおすすめです。

マグネシウム ─ 天然の血管リラックス薬

マグネシウムは、血管の筋肉に作用してカルシウムの働きを適度に抑制し、血管の過剰な収縮を防ぐはたらきがあります。このことから、マグネシウムは「天然のカルシウム拮抗薬」とも呼ばれています。

研究によると、1日368mgのマグネシウムを3ヵ月摂取することで、収縮期血圧が約2mmHg、拡張期血圧が約1.78mmHg低下したという報告があります。

マグネシウムの1日の推奨量は、成人男性で320〜370mg、成人女性で260〜290mgですが、現代の日本人は不足しがちです。精製された白米やパンを主食とする食生活では、マグネシウムが含まれる糠や胚芽の部分を摂取できないためです。

マグネシウムを多く含む食品には、ナッツ類(アーモンド、カシューナッツなど)、海藻類(あおさ、青のり、わかめなど)、大豆製品(豆腐、納豆、油揚げなど)、魚介類(いわし、あさり、しじみなど)、全粒穀物(玄米、全粒粉パンなど)があります。

カルシウム ─ 不足が高血圧を招く

カルシウムは骨の健康維持だけでなく、血圧にも深く関わっています。カルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンが分泌され、これが心臓や血管を収縮させて血圧が上昇します。高血圧になりやすい方には、カルシウムの吸収や調節機能が低下している方も多いことがわかっています。

カルシウムを多く摂取することで、高血圧の方で収縮期血圧が約2mmHg、拡張期血圧が約1mmHg程度低下するという報告があります。

カルシウムの1日の推奨量は、成人男性で700〜800mg、成人女性で600〜650mgです。カルシウムは乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)や小魚(しらす、煮干しなど)、大豆製品、緑黄色野菜(小松菜、モロヘイヤなど)に多く含まれています。

なお、カルシウムの吸収率は25〜30%程度とやや低いため、吸収を助けるビタミンDを含む食品(きのこ類、鮭、いわしなど)と一緒に摂取するとより効果的です。

食物繊維 ─ 塩分を吸着して排出

食物繊維は血圧に直接作用するわけではありませんが、ナトリウムや余分なコレステロールを吸着して体外に排出するはたらきがあります。特に水溶性食物繊維のアルギン酸は、ナトリウムの排出を促す効果が期待できます。また、腸内環境を整えることで、間接的に血圧の安定に寄与します。

食物繊維の1日あたりの目標量は、成人男性で20〜21g、成人女性で17〜18gです。野菜類、海藻類、きのこ類、豆類、全粒穀物などに多く含まれています。

EPA・DHA(オメガ3脂肪酸)─ 血管をしなやかに

EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、青魚に多く含まれるn-3系不飽和脂肪酸です。血液をサラサラにし、血栓ができるのを防ぐとともに、血管をしなやかに保つはたらきがあります。

米国心臓学会(AHA)の研究によると、EPAとDHAを1日2〜3g摂取した人は、摂取しなかった人に比べて収縮期血圧と拡張期血圧が平均して2mmHg低下しました。さらに、高血圧のある人では最高血圧が平均4.5mmHg低下したという報告もあります。

EPA・DHAは体内でほとんど合成できない必須脂肪酸であるため、食事から摂取する必要があります。サバ、イワシ、サンマ、アジなどの青魚に豊富に含まれており、1日100g以上の魚を食べることが推奨されています。

GABA(γ-アミノ酪酸)─ リラックス効果で血圧低下

GABAは、アミノ酸の一種で、血管を収縮させる作用のあるノルアドレナリンの分泌を抑制することで、血管の収縮を和らげ、血圧を下げる効果があります。

研究では、1日30mg以上のGABAを継続して摂取することで、高めの血圧が低下することが確認されています。正常な血圧の方が摂取しても、必要以上に血圧が下がることはないため、安心して摂取できます。

GABAは、トマト、ナス、かぼちゃなどの夏野菜や、納豆、キムチなどの発酵食品、発芽玄米などに多く含まれています。近年では、GABAを配合した機能性表示食品も多く販売されています。

酢酸 ─ お酢の降圧効果

お酢の主成分である酢酸には、血圧を下げる効果があることが科学的に証明されています。酢酸は体内で代謝される際に、血管を拡張させるアデノシンに働きかけ、血圧の上昇を抑えます。また、血圧上昇に関わるホルモン調節機構(レニン・アンジオテンシン系)を穏やかに抑制するはたらきもあります。

臨床研究では、血圧が高めの方が食酢約15mL(大さじ1杯、酢酸750mg相当)を10週間毎日摂取したところ、最高血圧が平均6.5%、最低血圧が平均8.0%低下したという結果が報告されています。

ただし、血圧が正常な方では顕著な効果は見られないこと、また摂取をやめると血圧は元に戻ることから、継続して摂取することが重要です。お酢は原液のまま飲むと胃を傷める可能性があるため、必ず5倍以上に薄めるか、料理に使用するようにしましょう。


4. 血圧を下げる効果が期待できる食べ物一覧

ここからは、血圧を下げる効果が期待できる具体的な食べ物をカテゴリー別にご紹介します。

野菜類

野菜はカリウムや食物繊維が豊富で、低カロリーなため、高血圧の改善に最適な食品群です。

食品名カリウム含有量(100gあたり)特徴
ほうれん草690mg硝酸塩も含み、血管拡張作用が期待できる
小松菜500mgカルシウムも豊富
アボカド720mg良質な脂質も含む
里芋640mg茹でてもカリウムが流出しにくい
じゃがいも410mg皮ごと調理するとより効果的
トマト210mgGABAも豊富に含む
ブロッコリー360mgビタミンCも豊富

野菜は1日350g以上の摂取が推奨されています。生で食べられるものはサラダで、加熱する場合は蒸し調理や電子レンジ調理がカリウムの流出を防げます。

果物類

果物もカリウムが豊富で、手軽にミネラルを補給できます。ただし、糖質(果糖)も含まれるため、糖尿病や肥満のある方は食べ過ぎに注意が必要です。

食品名カリウム含有量(100gあたり)特徴
バナナ360mgGABAも含み、手軽に食べられる
キウイフルーツ290mgビタミンCも豊富
170mg秋の味覚、食物繊維も含む
メロン350mgGABAも豊富
オレンジ140mgビタミンCと一緒に摂取
りんご120mg食物繊維(ペクチン)も含む

果物は1日200g程度を目安に、朝食やおやつに取り入れるとよいでしょう。

魚介類

青魚を中心とした魚介類は、EPA・DHAが豊富で、血圧だけでなく血管の健康維持に役立ちます。

食品名EPA・DHA含有量(100gあたり)特徴
サバ約1,700mg味噌煮にすると煮汁ごと摂取できる
サンマ約2,200mg塩焼きが定番、旬の秋に脂がのる
イワシ約1,700mg缶詰でも栄養価が高い
アジ約700mg刺身や開きで食べやすい
サケ約1,100mgビタミンDも豊富
しらすカルシウム豊富丸ごと食べてカルシウム補給

魚は週に3〜4回以上食べることが推奨されています。缶詰を活用すれば、手軽に摂取できます。汁ごと料理に使えば、溶け出した栄養素も無駄なく摂取できます。

大豆製品

大豆製品は、カリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維をバランスよく含む優秀な食品です。また、大豆に含まれるイソフラボンには血圧を下げる効果があるとされています。

食品名特徴
納豆カリウム660mg/100g、発酵食品でGABAも含む
豆腐低カロリーでカルシウムも豊富
豆乳カリウム190mg/100g、牛乳の代替として
味噌発酵食品だが塩分に注意
枝豆冷凍でも栄養価が保たれる

1日1食は大豆製品を取り入れることを心がけましょう。納豆は手軽に食べられ、栄養価も高いためおすすめです。

海藻類

海藻類は、カリウム、マグネシウム、食物繊維が豊富で、低カロリーなため、積極的に摂取したい食品です。

食品名カリウム含有量(100gあたり)特徴
昆布(乾燥)6,100mgだし汁として活用
わかめ(乾燥)5,200mg味噌汁やサラダに
ひじき(乾燥)4,400mg煮物の定番食材
もずく酢の物で手軽に摂取食物繊維も豊富
青のりマグネシウムも豊富ふりかけとして活用

ただし、海藻類の過剰摂取はヨウ素の過剰症を引き起こす可能性があるため、1日5〜10g程度、週3〜4回を目安に摂取しましょう。

ナッツ類

ナッツ類は、カリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維、ビタミンE、良質な脂質をバランスよく含む栄養価の高い食品です。

食品名特徴
アーモンドマグネシウム310mg/100g、ビタミンEも豊富
カシューナッツマグネシウム240mg/100g
くるみα-リノレン酸(オメガ3)を含む
ピスタチオカリウム970mg/100g

ナッツ類は高カロリーなため、1日20〜30g(手のひらに軽く乗る程度)を目安に、無塩のものを選びましょう。間食としておやつ代わりに食べるのがおすすめです。

乳製品

低脂肪の乳製品は、カルシウムの摂取源として優れています。DASH食(後述)でも、低脂肪乳製品の摂取が推奨されています。

食品名特徴
牛乳カルシウム110mg/100g、低脂肪タイプを選ぶとよい
ヨーグルト乳酸菌による腸内環境改善効果も
チーズカルシウム豊富だが塩分に注意

1日1〜2杯の牛乳やヨーグルトを摂取することで、カルシウム不足を補えます。

全粒穀物

精製されていない全粒穀物は、カリウム、マグネシウム、食物繊維が豊富です。

食品名特徴
玄米白米の約3倍のカリウム、食物繊維も豊富
オートミール水溶性食物繊維が豊富
全粒粉パン精製された白いパンより栄養価が高い
そばカリウム、マグネシウムが豊富

主食を白米から玄米や雑穀米に変えるだけで、自然とミネラルや食物繊維の摂取量を増やすことができます。


5. 注目の食事療法「DASH食」とは

DASH食の概要

DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、1990年代にアメリカの国立衛生研究所(NIH)で開発された、高血圧予防・改善のための食事療法です。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」にも掲載されており、科学的根拠に基づいた効果的な食事法として世界的に推奨されています。

DASH食の特徴は、単一の栄養素ではなく、複数の栄養素を組み合わせて摂取することで相乗効果を得る点にあります。

DASH食の基本原則

DASH食では、以下の食品を積極的に摂取します。

  1. 野菜・果物を豊富に摂る
  2. 低脂肪の乳製品を取り入れる
  3. 全粒穀物を主食にする
  4. 魚、鶏肉、豆類、ナッツ類を中心にたんぱく質を摂る
  5. 赤身の肉、脂肪分の多い肉は控える
  6. 甘いものや砂糖を含む飲料を控える
  7. 減塩を組み合わせる(DASH-sodium食)

DASH食の効果

アメリカで行われた臨床試験では、DASH食を2ヵ月続けたところ、最高血圧が平均11.4mmHg低下したという報告があります。さらに、DASH食と減塩を組み合わせることで、より高い降圧効果が得られることが証明されています。

また、DASH食は血圧だけでなく、冠動脈疾患のリスクを24%、脳卒中のリスクを18%低下させる可能性があるとも報告されており、総合的な心血管疾患の予防に有効とされています。

日本人向けDASH食のポイント

アメリカのDASH食はナッツ類や低脂肪乳製品を多用するため、日本人の食習慣にはなじみにくい面があります。そこで、日本人向けに以下のようなアレンジが提案されています。

  • 和食を中心にメニューを構成する
  • 出汁や香辛料を使い、減塩でも満足できる味付けにする
  • ナッツ類の代わりに海藻(ひじきなど)でマグネシウムを摂取する
  • 大豆製品を積極的に活用する
  • 魚を中心としたたんぱく質摂取を心がける

6. 減塩の重要性と実践のコツ

血圧を下げるためには、血圧を上げる栄養素を減らすことも重要です。その代表が塩分(ナトリウム)です。

減塩の目標値

日本高血圧学会では、高血圧の予防・治療のために1日6g未満の塩分摂取を推奨しています。WHO(世界保健機関)ではさらに厳しく、1日5g未満を国際的な目標としています。

しかし、日本人の平均摂取量は約10gと、目標の約2倍を摂取しているのが現状です。減塩は高血圧ケアの要となりますが、急激な減塩は食事の満足度を下げ、長続きしない原因になります。無理なく続けられる工夫が大切です。

実践しやすい減塩のコツ

  1. だしを活用する:かつお節、昆布、干し椎茸などでとった天然だしは、うま味が豊富で減塩でも満足感が得られます。
  2. 香味野菜・香辛料を使う:しょうが、にんにく、しそ、ねぎ、唐辛子、カレー粉などを使うと、塩分が少なくても味に深みが出ます。
  3. 酸味を活用する:レモン、酢、梅干しなどの酸味は、塩味を引き立てる効果があります。
  4. 麺類のスープは残す:ラーメンやうどんのスープには多くの塩分が含まれています。麺と具だけ食べ、スープは残しましょう。
  5. 調味料は「かける」より「つける」:醤油やソースは料理にかけるのではなく、小皿に少量とって「つける」ことで使用量を減らせます。
  6. 減塩調味料を活用する:減塩醤油や減塩味噌など、減塩タイプの調味料を活用しましょう。
  7. 加工食品の栄養表示を確認する:ハム、ソーセージ、練り製品、漬物などの加工食品には意外と多くの塩分が含まれています。パッケージの栄養成分表示で食塩相当量を確認する習慣をつけましょう。

「排塩」も意識する

減塩と同時に、摂取した塩分を体外に排出する「排塩」も意識しましょう。カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂取することで、腎臓からのナトリウム排泄が促進されます。

日本高血圧学会では、ナトリウムとカリウムの比(ナトカリ比)に注目しており、理想は2未満とされています。減塩とカリウム摂取を組み合わせることで、より効果的な血圧管理が可能になります。


7. 血圧を上げてしまう食べ物にも注意

血圧を下げる食べ物を積極的に摂取する一方で、血圧を上げてしまう食べ物にも注意が必要です。

塩分の多い食品

以下のような食品は塩分が多いため、摂取量に注意しましょう。

食品塩分量(目安)
梅干し(1個)約2g
たくあん(3切れ)約1.3g
味噌汁(1杯)約1.5g
カップラーメン(1個)約5〜6g
食パン(6枚切り1枚)約0.8g
ハム(2枚)約1g
ちくわ(1本)約0.6g

アルコール

過度な飲酒は血圧を上昇させる原因となります。アルコールには血管を収縮させたり、交感神経を刺激したりする作用があるためです。高血圧の方は、純アルコール摂取量を男性で1日20〜30mL以下(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)、女性はその半分の10〜20mL以下に抑えることが推奨されています。

飽和脂肪酸の多い食品

肉の脂身、バター、生クリームなど飽和脂肪酸の多い食品は、動脈硬化を進行させる要因となります。血圧への直接的な影響は大きくありませんが、血管の健康を維持するためには控えめにしましょう。


8. 効果を高める調理法と食べ方のポイント

血圧を下げる食べ物の効果を最大限に引き出すための調理法と食べ方のポイントをご紹介します。

カリウムを逃さない調理法

カリウムは水溶性のため、茹でこぼしたり長時間水にさらしたりすると流出してしまいます。以下の調理法がおすすめです。

  1. 生で食べる:サラダやスムージーなど、生で食べられるものはそのまま摂取
  2. 蒸す・電子レンジ調理:水を使わないため、カリウムが流出しない
  3. 汁物にする:味噌汁やスープにすれば、溶け出したカリウムも摂取できる
  4. 皮ごと調理する:じゃがいもやさつまいもは皮にカリウムが多いため、皮ごと調理

魚の栄養素を効率よく摂取する方法

EPA・DHAは脂に含まれるため、焼き魚で脂を落としすぎると損失が大きくなります。

  1. 刺身で食べる:生食が最も効率よく栄養素を摂取できる
  2. 煮魚にして煮汁ごと食べる:サバの味噌煮など、煮汁も一緒に摂取
  3. ホイル焼きにする:脂を逃さず調理できる
  4. 缶詰を活用する:汁ごと料理に使えば栄養素を無駄なく摂取

食べる順番と時間

  1. 野菜を先に食べる:食物繊維を先に摂取することで、血糖値の急上昇を防ぎ、満腹感も得られる
  2. よく噛んでゆっくり食べる:満腹中枢を刺激し、食べ過ぎを防ぐ
  3. 規則正しい食事時間:不規則な食事は自律神経のバランスを乱し、血圧に影響する

9. 食事療法を行う際の注意点

血圧を下げるための食事療法には、いくつかの注意点があります。

腎臓病のある方はカリウム制限が必要

腎臓の機能が低下している場合、カリウムの排泄がうまくできなくなり、高カリウム血症を引き起こす可能性があります。高カリウム血症は、筋力低下や不整脈、重篤な場合は心停止を引き起こすこともあります。腎臓病と診断されている方は、必ず主治医に相談してからカリウムの摂取量を調整してください。

糖尿病のある方は果物の摂取量に注意

果物はカリウムが豊富で血圧管理に有効ですが、糖質(果糖)も含まれています。糖尿病や血糖値が気になる方は、果物の摂取量を1日150〜200g程度に抑え、食べ過ぎに注意しましょう。

降圧薬を服用中の方

グレープフルーツは一部の降圧薬(カルシウム拮抗薬など)の効果を増強させる可能性があるため、服用中の薬によっては摂取を控える必要があります。また、GABAを配合したサプリメントは、降圧薬との相互作用で血圧が下がりすぎる可能性があるため、医師や薬剤師に相談してから摂取してください。

急激な食事変更は避ける

長年の食習慣を急激に変えることは、ストレスになり長続きしません。無理のない範囲で少しずつ取り入れ、習慣化することが大切です。

食事療法だけに頼らない

高血圧の改善には、食事療法だけでなく、適度な運動、禁煙、節酒、ストレス管理、十分な睡眠など、総合的な生活習慣の改善が重要です。血圧が高い状態が続く場合は、必ず医療機関を受診してください。


10. まとめ

高血圧の予防・改善には、毎日の食生活の見直しが欠かせません。本記事でご紹介したポイントをまとめます。

積極的に摂りたい栄養素と食品

栄養素主な食品はたらき
カリウム野菜、果物、いも類、海藻、豆類ナトリウムの排泄を促進
マグネシウムナッツ類、海藻類、大豆製品、魚介類血管を拡張させる
カルシウム乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜血管の収縮を抑制
食物繊維野菜、海藻、きのこ、全粒穀物ナトリウムを吸着して排出
EPA・DHA青魚(サバ、イワシ、サンマなど)血管をしなやかに保つ
GABAトマト、発酵食品、発芽玄米血管の収縮を和らげる
酢酸お酢(穀物酢、米酢、黒酢など)血管を拡張させる

実践のポイント

  1. 減塩を基本に、カリウムを多く含む食品で「排塩」も意識する
  2. 野菜は1日350g以上、果物は1日200g程度を目標に
  3. 魚は週3〜4回以上食べる
  4. 主食を白米から玄米や雑穀米に変える
  5. だしや香味野菜を活用し、薄味でも満足できる料理を心がける
  6. 加工食品の栄養表示を確認する習慣をつける
  7. 食事だけでなく、運動や禁煙など総合的な生活習慣の改善を

血圧管理は一朝一夕にはいきませんが、毎日の小さな積み重ねが大きな成果につながります。本記事を参考に、できることから少しずつ取り組んでみてください。

血圧が気になる方、健康診断で指摘を受けた方は、一度医療機関を受診し、専門家に相談されることをおすすめします。当院では、高血圧をはじめとする生活習慣病の診療・相談を行っております。お気軽にご相談ください。


参考文献


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスを行うものではありません。症状や治療については、必ず医師にご相談ください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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